産業分析の基礎
本項目では産業分析を通じて、
ためにどのような取り組みがあるのかについてご説明します。
- 産業分析で現状を知る
- 現状からアクションを取る
現状把握
本産業分析では
RESAS
および
株式会社価値総合研究所 地域経済循環分析の解説PDF
を利用しています。 本分析のデータを用いて、地域内の経済の現状を知り、
どのようなアクションが必要なのか、データから選択していきましょう。
地域経済循環構造とは
地域経済循環分析を正しく理解するためには、 「地域経済循環構造」を理解することが必要です。
これまで地域経済については、企業主体の産業分析のように活発に行われていませんでした。
今後人口減少による税金による収入の減少を鑑みると、
地域経済をどのように維持、改善していくのかといった視点が必要となります。
以下の項目別に地域経済循環構造について理解していきましょう。
- 地域経済循環分析の概念
- 地域の稼ぐ力について
- 所得の循環構造について
地域経済循環分析の概念
参考文献[1]PDF
より、地域経済循環分析の必要性について抜粋します。
問題意識③ :地域経済の分析ツール (地域経済循環分析)
- 基本的に地域経済を数値で見ることがなかった。地域経済全体の仕組みを意識することもなく、地域政策全般で数値を分析して、検討することもなかった。
- そこで、地方創生、ローカルアベノミクス等の政策的な要請と EBPM (エビデンスに基づく政策形成)等の地域住民からの公共への要請が相俟って、内閣官房が RESAS(地域経済分析システム)を構築。
本分析機能は
RESAS
の一部の分析機能を細かなエリア単位で利用可能となっておりますが、 市町村単位であれば
RESAS
より地域経済循環分析を行うことができますので、本機能と組み合わせてご使用ください。
参考文献[1]PDFをもとに作成
地域経済循環分析では地域内の経済の流入を数値化しています。 地域経済循環構造とは
「地域の稼ぐ力」+「所得の循環」です。
地域間の財・サービスの交易で、地域がつながり、それらの複数の地域で構成される
一体的な経済圏(圏域)が形成されている場合もありますが、
一般的には地域内で「地域の稼ぐ力」を上昇させ、「所得の循環」を行うことで、
地域内経済が安定化すると言われています。
地域経済循環率が 1 以上で、他地域に所得を分配している自立した地域は全国の約 14 %( 2020 年時)であり、
基本的には都市部や発電所等の装置産業が立地している地域です。
また、雇用者所得を他地域に分配している地域は全国の約 32 %であり、
基本的には地域の核となっている市町村です。その他の地域は都市部や中核地域に経済的に依存している関係となっています。
その他所得を他地域に分配している地域は全国の2割に満たない状況であるため、一部の地域の税収を他地域に流出させている構造です。
本分析では現状の地域の地域経済循環構造を理解し、
どのように地域内で経済を活性化させるのかのアクションプランの基礎となるデータを作成することが目的です。
地域の稼ぐ力について
地域内の産業創出や雇用創出は地域内の経済を豊かにするだけではなく、
地域、行政サービスの充実化による住まいやすさの向上や、移住政策等の様々な好循環を生み出します。
この項目では地域の稼ぐ力を向上させるための施策の一部をご紹介します。
売れる財・サービスを生産するためには
売れる財・サービスを生産のために以下の3ポイントを意識してみましょう。
- 外から所得を稼ぐ
- 域内で取引を拡大させる
- 不得意な部分は他地域へ
項目1においては、地域が得意な産業で地域外から受注することが挙げられます。
地域内の経済循環に大きく寄与すると言われている「地域密着型企業」や 「地域商社」は、
こういった地域が持つ独自の資源を商品、サービス化し、全国や世界に展開していくことで外貨を稼ぐことを目的にしています。
項目2においては、地域の得意な(特化している)産業を中心として、
域内でお金(所得)を循環させるが挙げられます。 域内調達の活発化
(クラスター化)により、販売先と調達先の結びつきの強化をすることで、
結果として労働生産性の上昇が期待されます。
域内にある程度の需要が確保できれば生産者にとって一定の利潤の確保につながります。
一般的には「地産地消」と呼ばれ、物流等も域内で行われますので、循環型社会形成や、
エネルギー効率が高まるため低炭素都市づくりにもつながります。
クラスター化が進んでいない場合、消費先が少ない状態ですので、
地域内取引の核となる産業の育成を行うことで全産業の生産性の向上につながります。
項目3においては、 地域が不得意な産業は地域外へ発注することが挙げられます。
例えば地域内に資源や産業がなく、その獲得や創出にコストがかかってしまうのは、 あまり得策ではありません。
地域間交易の活発化することで、労働生産性上昇が見込まれることがありますので、
項目 1、3 は地域間の得意な点を互いが活かせるような地域経済圏を結ぶことが重要となります。
地域間交易の活発化
本項目では、地域間交易の活発化の方法についてご紹介します。
地域外との取引においては、活発な地域の方が地域の労働生産性が高く、取引をすることでメリットを享受しています。
これは比較優位な産業で域外から所得を稼ぎ、不得意な産業は地域外へアウトソーシングされることで、
全体として取引のメリットを享受していることが示されています。
その点を理解するためにも、自身の地域の経済資源の強み、弱みを理解する必要があります。
また、地域の経済循環構造の適正化は、閉鎖構造を目指すものではありません。
地域間のゼロサムゲームでもありませんので、近隣で経済循環圏を構築することで、
経済的な自立を互いに行うことが望ましい形です。
地域が地域の特徴や遊休資源を有効に活用し、地域間の交易を活発化させることで新たな需要(付加価値)を創出しましょう。
域内調達の活発化 (クラスター化)
地域で得意な産業(地域に集積している産業)は域内調達率が高く、
域内調達率が高い地域では労働生産性が比較的高いと言われています。
特に、第 2 次産業では顕著ですので、第 2 次産業が主要産業の地域はクラスター化は大きな意味を持ちます。
産業別に見ると、域内調達が上昇することで第 2 次産業の労働生産性は大きく向上します。
一方、第 3 次産業は域内調達と労働生産性との間に強い関係性が見られません。
これは、クラスター形成においては単なる地理的な集積だけでなく、顔を合わせたコミュニケーションや地域のネットワークを通じて、
構成する企業・産業の生産性向上、イノベーション促進、 新規事業の形成が促進されるポーターのクラスター理論 (
参考文献[2]
)によるものです。
ただし、この理論が発表された 1998 年と比べ、インターネットの発達などの要素が新しく生まれています。
e-コマースの発達を考えると新しいクラスター化を検討することも大変重要になるでしょう。
地域内取引の核となる産業の育成
地域経済の強化において、
地域内取引の核となっている産業を支援することで地域全体の労働生産性を引き上げることが一般的です。
例えば現在第 1 次産業の特定の分野が核となっている場合、
その産業の発展の支援をすることで、その産業の周辺に関わる商品、サービスが必要となってきます。
例えば雇用が増加した場合、不動産やその他生活のサービスに関わる産業が必要とります。
所得の循環構造について
本分析機能や
RESAS
を用いて、地域産業分析結果を手に入れた場合、 次のアクションはどのように取れば良いでしょうか。
地域経済循環の好循環構造を理解し、その好循環構造に近づけていくことが重要です。
好循環構造とは、分配、支出面で所得が大幅に流入し、所得循環構造も構築されており、
生産面の稼ぐ力が住民所得に結び付いている状態です。
参考文献[1]PDFをもとに作成
地域経済循環分析
まとめ
このページでは地域の産業分析を行うための基礎をご紹介しました。 このページで紹介していない他の地域の分析事例が
参考文献[1]PDF
にありますので、ご参考ください。